石川県能美市で昨年10月、総務部に勤務していた職員が上司のパワーハラスメント(パワハラ)を受けて自ら命を絶つという痛ましい事件が発生しました。
能美市は2026年2月10日、この事実を公表し、上司への処分と市長や幹部の責任について正式に謝罪しました。
事件は「残業三兄弟」と呼ばれた言葉にも象徴される、管理職による不適切な指導が背景にあるとされています。
上司によるパワハラの具体的な内容とは?
この事件で問題視されたのは、上司だった課長級職員による部下への言動です。
亡くなった職員とその同僚2人を「残業三兄弟」と呼び、残業時間の申請実績を正当に認めなかったり、事前申請がない時間外勤務を受け付けないと伝えるなどしました。
また、時間外勤務実績の調整や、部下に対して「どうせすぐ忘れるだろう」といった人格を否定するような表現も繰り返していたとされ、第三者委員会は少なくとも 5件のパワハラ行為 を認定しています。

遺書が語る職場環境と心理的負担
遺書が語る職場環境と心理的負担亡くなった職員が残した遺書には、次のような記述がありました。
「効率的でない仕事は改善せよと指示され、時間外勤務とは認められない」
「急に仕事を指示され、遅いと責められた」
引用:北國新聞
これらは、部下の気持ちを無視した管理監督による強圧的な職場環境と、過度な心理的負担を示すものでした。
こうした状況が長期化することで、職員は「時間外申請が非常にしづらい」と感じるようになっていたことが明らかになっています。
また事件前、職員は同僚に「最近死にたい」などと相談していたことが分かっており、カウンセリングも実施されていましたが勤務状況そのものの改善にはつながらなかったと報告されています。
組織としての対応
能美市は同僚からのパワハラ申立てを受け、同年9月30日には庁内での聞き取り調査を開始しました。
しかし亡くなった職員は調査に応じず、後に 第三者委員会が設置 され、詳細な調査が進められました。
その結果、第三者委員会は上司の行為をパワハラとして認定し、内外の調査過程や改善点についての報告書を2026年1月22日に提出しています。
市の処分と責任
能美市は調査結果を受け、2月6日付で問題となった上司を 停職6ヶ月の懲戒処分 としました。
また管理監督責任を果たせなかったとして、井出敏朗市長は 給与を3か月間20%減額 すると発表しました。
さらに、副市長・総務部長にも それぞれ給与10%減額(3か月間) の処分が科され、行政として責任の所在を明確にしています。
これに対して市長自身も「事態を防げなかったことに心からおわび申し上げる」と謝罪しています。
なぜ防げなかったのか?
この事件が起きた背景として、単に上司個人の問題ではなく、職場全体のパワハラ防止策が十分に機能していなかった可能性も指摘されています。
職場では申請制度や相談窓口が整備されていたものの、実態として「申請しづらい空気」や、「相談しても改善されない」という心理的障壁が存在していたと考えられます。
こうした状況は日本全体のパワハラ問題と共通する構造的課題を反映しており、同時期にも他業種・企業で類似の事件がメディアで報じられるなど、根深い職場文化の改善が求められています。
他自治体・企業への教訓と再発防止策
能美市の第三者委員会は、以下のような再発防止策を提言しています。
・内部通報制度の充実
・勤怠管理のチェック体制の強化
・上司のハラスメント研修の徹底
・相談窓口の運用改善
これらは自治体だけでなく企業全般に共通する必要策です。
職場内での早期発見とケア体制の整備は、従業員のメンタルヘルス保護に直結するため、各組織にとって優先度が高い課題といえるでしょう。
ネット上での反応と声
この事件はネット上でも大きな反響を呼び、次のような声が上がっています。
・「職場の過重労働が許されない社会になってほしい」
・「パワハラ防止の仕組みを本当に機能させるべき」
・「公務員でさえこうしたことが起きるのか…」
また、
・「企業や自治体のハラスメント対策は形だけになっている」
という批判の声も見られ、幅広い議論が起きています。

まとめ
石川県能美市の事件は、職場のハラスメントが個人の命にまで影響を与えるという重い実例です。
組織としての責任・監督のあり方、日常的な職場文化の改善、人事制度の見直しなど、多くの課題が浮き彫りになりました。
同時に今回の対応は、処分と謝罪が行われた点で一定の前進と評価される一方、職場での予防策と実効性ある支援体制の構築がこれからの社会課題としてより強く求められています。
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